ソーラーマンインタビュー
聞き手:くぼたつ
翻訳:久保田一郎
くぼたつ たわいないことなんですけれど、ずいぶんと仲がよろしい夫婦ですよね。
ソーラーマン こんな山の中で22年間も二人で暮らすためには夫婦である以前によい友達でなければならなかったんです。今でもいい友達だから仲のいい夫婦でいられるんですよ。
くぼたつ この僕らが今座っているくぼみが恐竜の足跡だって聞いたんですけど。
ソーラーマン これは5000万年くらい前の恐竜の足跡なんですけど(といいながら座っているくぼみを指さし)、その前、ユタってのは海の底で、恐竜がいたころはこの辺はビーチで、そこで彼らがボンと足跡を付けて、それが崩れないままで今でも形が残っているんですよ。
くぼたつ この辺って(ぐるっと見回して)、いっぱい鳥の足跡があるから、肉食(恐竜)が食べてさ、その食べ残しを鳥が食べたとか、そういうのがあるのかな?
ソーラーマン 今でもおんなじことやってますよ(笑)。
くぼたつ ここ以外の大地はやっぱり侵食されて削られていったのかな。盛り上がったんじゃないよね。
ソーラーマン そうです。侵食されてここの大地は形作られていったのです。
くぼたつ なんでここに来たいと思ったのかな、何となくわかる気がするけど。
ソーラーマン 39歳の時に仕事をやめて、蓄えもあったので都会を離れて自然の中で住もうと思って、占星術師に見てもらったとき、セントジョージかシーダーシティかアリゾナの辺りに住めばいいんじゃないんですかと言われたんです。3〜4人に占ってもらったんだけど、みんながみんなそう言ったんです。そこで、非常にエネルギーの高い場所があって、そこを探しなさいって言われました。
で、実際に探しに来たらこんなにいい場所があったんで、それ以来ここにいるんです。
くぼたつ ここまで探しに来たの? わはははは。道はあったんですかね?
ソーラーマン まさか! ハイウェイはこんなに(両手を大きく広げる)広い道があるのに、ここに来た時ときたら、ひどく狭い道しかなくてね、苦労しましたよ本当に。
くぼたつ 食料の備蓄とかはどうなっているんです?
ソーラーマン だいたい一年分くらいの食料を蓄えていますよ。ここに来た当時は本当に乾いた日しか町まで行かなかったですね。あるクリスマスの時は、下に降りられなくて、3月になるまでクリスマスプレゼントを買えなかったんですよ。
くぼたつ うわぁー!かっこいいー! 言ってみてぇなそんなこと!
くぼたつ 通信環境はどうなっているんですか?
ソーラーマン FM通信です。1991年までは、FMで通信するのは禁止されていたんですが、その年に解禁になったので、こういう通信の形式をとっています。
くぼたつ FMでやってるの?
ソーラーマン FMで、通信機が下に置いてあって、お互いにポイントしあっていて。そこからが電話なんです。
電話会社に頼んで線を引いてもらおうとすると20万ドル(約2500万円)くらいかかるんです。そんなのは冗談じゃないし、そんなに電話が必要なわけでもないので。電気も、電気会社に頼んでいれてもらおうとすると40万ドル(約5,000万円)くらいかかるんです。で、どうしてもここに住みたかったんで、それなら(電気を)自分で作ってしまおうと。
ここに住み始めたころから5年前までは羊を育てるビジネスをしていたんです。もうやめてしまいましたがね。
この周りにやっぱり同じビジネスをすでにやっている人がいて、そこにノウハウを聞きに行ったんです。それがなんであれ、何かを始めるにはすでにやっている人たちに聞くのが一番いいですよ。
くぼたつ 今はどんな動物を飼っているんですか?
ソーラーマン 鶏を10匹飼っています。それで卵を取っていて。卵を産まなくなったらシチューにするんですよ(笑)。そのままだと肉が堅いんで、よく煮込んでから食べるんです。
くぼたつ ところで、ミスターソーラーマンと呼ばれていますけれど、それは何故なんですか?
ソーラーマン 地元の、セントジョージの新聞に記事を書き始めたんです。それはこういう生活スタイルなんかに対して読者から質問が来て、それに答えるっていう形のものだったんですけど、とりあえず、タイトルがなかったんですね。それでまぁ、「ミスターソーラー」でいいんじゃないか、と。そんな簡単なことなんですよ(笑)。
くぼたつ 本当に生活のエネルギー源はソーラーシステムだけなのかな?
ソーラーマン そうです。まぁ、少しは風力とかを併用することもありますが。辛抱強くね。インターネットで最初の本を売るのに2年間かかりました。辛抱強くないとこういうとこでは持ちませんね。
くぼたつ ここに来て何が一番嬉しかったのかな?
ソーラーマン 平和で静かなことですね。独立するってのは素晴らしいことですけど、そのためにきちんと仕事をしないとついていけませんよ。でも、自分のやりたい時にやりたいことを出来るのは嬉しいですね。
くぼたつ 今、仕事って言ったけど、なんのために、どういう意味の仕事なんだろうな? 僕たちだとすぐお金もうけになっちゃうけど、あなたがたはそうじゃないと思うわけですよ。そこのところをお聞かせ下さい。
ソーラーマン 39歳になるまでノースキャロライナで仕事をして、多少お金を貯めて、引退したんですよ。で、もう町の中で働くのはいやになっちゃって。多少、モノは少なくても古くてもいいから、こういう自然の中で生活したかったんですよ。ごみごみとしたところで働きたくなかったからこういうところにいるんです。
くぼたつ じゃ、今度はぼくの切実な質問なんですけれど、僕には二人の小さな子供がいて、これから将来大きくなるのに今の(東京の)環境は多分よくないんじゃないかと思うんです。で、ぼくは、あなた方の生活はこの問題に対するひとつの回答じゃないかと思うんですよ。そのことについて、あなたの意見をお聞かせ下さい。
ソーラーマン それぞれ個人がどういった環境に住みたいのかは個人の意志で決めることです。子供の人生にものすごく関わってあげて、子供が進みたい方向に動機づけをしてあげることが必要なんじゃないですか。
私たちはこの環境が欲しかった。だから、作った。これから生まれてくる子供たちにも、それぞれ、どういう環境に行きたいのか、それを実現するためにはどれだけ堅実に働いてどれだけ責任をもって物事をやればいいのかを教えてあげたり、親の愛を注いで、子供が自分の意見を持つように育てて上げることが一番必要なんじゃないですか。
くぼたつ 石油がなくなると言われていて、僕らの時代は大丈夫だろうだけど、僕らの子供たちの時代にはなくなるかもしれないわけです。いままでは他人事だったけど、子供が出来ると真剣に考えるわけです(笑)。だから、ここの環境がきっと参考になると思うのですが、そのことをどうお考えですか。
ソーラーマン まぁ、私は別にそんなに深刻な理由でソーラーシステムを使っているわけじゃなくて、いろいろ試した結果、これに落ち着いたんです。ソーラーシステムは、あまり使っている人がいません。ですからまだまだ高価なのです。ですが、ここのような環境下ではソーラーシステムは安く感じるのです。なにしろ電気を引いてもらうと40万ドルですからね(笑)。何万人もの人が使うようになればもっとリーズナブルな価格になるでしょう。ちょうどコンピュータがそうだったようにね。要は需要と供給の問題なのです。
前は、ロウソクを使ってエネルギーを得ようとしていたこともありました。妻のフランが毎週70本のローソクを作っていたのですが、そんなことやってられなくて、で、ガソリンや石油を街から買ってきて燃やしたりしたこともあったのだけれど、それはにおいがひどくて、これもやってられない。で、試行錯誤の結果、ここの環境に一番あっているのがソーラーシステムだった。そういった理由でこれを使っています。
くぼたつ 本をインターネットで出版されたそうですけれど、やっぱりそういった事について書かれているのですか?
ソーラーマン 「ABC's of LIFE」のことですか? それは関係ないです(笑)。 |